ディスカバリー・モーメント discovery moment
ジェーン・グドール博士
Q1.ひらめいた瞬間について
最近、すばらしい体験をしました。ウィスコンシンのアメリカシロヅル(※)を飛行機で先導してフロリダへ連れて行くというプロジェクトがあり、それに招かれて、超軽量飛行機で、ツルたちと一緒に空を飛んだのです!
それはもう、すばらしいとしか言いようのないときでした。私の乗った飛行機が空に舞い上がり、ツルたちがそれに続きました。もう一機の飛行機は、ツルたちとほんの数メートルの近さで飛んでいました。あれ以上に鳥に近づいて人間が飛ぶということはできないでしょう。
なんの囲いもない飛行機から下を見下ろすと、眼下には静かな水面が広がり、そこには私たちの後を飛ぶツルの姿が映っていました。あまりに美しい光景で、魔法のようでした。世界の見え方が変わる瞬間でした。
ツルとの触れ合いでは、もう1つ発見がありました。私はこれまで哺乳類とずっと近くで触れ合ってきています。しかし、このような方法で鳥に近づいたのは初めてのことでした。
美しく、背の高いこのツルたちは非常に好奇心旺盛でした。見知らぬ私に近づいて、くまなく調べます。しかし、いくら見つめあってもツルの感情は読み取れないんですね。哺乳類は目を見ればだいたいの感情がわかるのだけれど……。私にとっては、とても不思議な発見でした。
※絶滅が心配されている北米のツル。博士が招かれたのは、保護によって数を増やした群れの雛に超軽量飛行機の後をついて飛ぶことを教え、その飛行機の先導で新たな越冬地への渡りをサポートするプロジェクト。新たな越冬地にツルが定着すれば新しい群れが生まれ、さらに生息数の増加が期待できる。
Q2.過去に戻れたら会いたい人は?
とてもたくさんいますから、ここでは二人だけ挙げましょう。ひとりは私の祖父です。私が生まれる前に死んでしまったのだけれど、みんなから、私は祖父の性格を非常によく受け継いでいると言われていました。
祖父は牧師でした。説教のなかで、祖父はよく動物の話をしたそうです。動物に残酷なことをしてはいけない、と。おそらく祖父は私の母に大きな影響を与え、私は母に非常に強い影響を受けて育ちました。だから、祖父の動物を愛する心を私が受け継いだのでしょうね。
もう一人は、アッシジの聖フランシスコ(※)。彼は、小鳥たちを「小さな兄弟よ、姉妹よ」と呼び、説教をし、救済しました。動物を、そして自然をこよなく愛した、すばらしい人物です。私がカトリックなら、彼が私の聖人でしょうね。
※カトリックの聖人。人間と自然の共鳴をうたう『太陽の歌』を創作した、中世イタリアの修道士。
Q3.100年後の世界に行けたら?
いま、すべての人が、地球の環境を守ろうと懸命に努力しています。よりよい社会を作ろうという試みを、力のかぎり続けています。100年後に、こうした努力が報われた世界を目にしたいですね。
人間の数が減って、破壊された環境が元に戻り、自然との調和を学んだ世界。生まれてきた子どもたちが、どんな空気を吸おうと、どんな食べものや飲みものを口にしようと、病気になることのない世界を見たい。いまでは、毎日、たくさんの子どもたちが飢餓で亡くなっています。そのような貧困がなくなった世界を見ることができたら。
100年後、環境破壊が「過去のもの」となっていたら、このような世界が実現できていることでしょう。
構成・文 江口絵理
